Ruby 3.2.0 Preview 1 リリース
Posted by naruse on 3 Apr 2022
Ruby 3.2系最初のプレビューリリースである、Ruby 3.2.0 Preview 1 が公開されました。Ruby 3.2では多くの機能を追加しています。
WASIベースのWebAssemblyサポート
WASIベースのWebAssemblyへのコンパイルがサポートされました。これにより、ブラウザやサーバーレスエッジ環境、その他のWebAssembly/WASI環境でCRubyのバイナリが利用できるようになります。現在この移植版はThread API以外のbasic testとbootstrap testをパスしています。

Background
もともとWebAssembly (Wasm)が導入されたのは、プログラムをブラウザの上で安全かつ高速に実行するためでした。しかし、様々な環境で安全かつ効率的にプログラムを実行するという目的は、Webだけでなく一般的なアプリケーションで長らく求められていたものです
WASI (The WebAssembly System Interface)はそのようなユースケースのために設計されました。そのようなアプリケーションはOSと通信する必要がありますが、WebAssembly自体はシステムインターフェイスを持たないVMの上で実行されます。WASIはこのシステムインターフェイスを規格化します。
RubyのWebAssembly/WASIサポートは、このようなプロジェクトを活用することを狙っています。これにより、Ruby開発者がそのような有望なプラットフォームで動くアプリケーションを書けるようになります。
ユースケース
このサポートは、開発者がCRubyをWebAssembly環境で利用することを促進します。たとえば、TryRuby playgroundのCRubyサポートです。CRubyをウェブブラウザの上で試すことができるようになりました。
技術的な話
現時点のWASIとWebAssemblyには、Fiberや例外やGCを実装するための機能に一部足りないものがあります。CRubyではこのギャップを埋めるために、ユーザランドで実行を制御できるAsyncifyというバイナリ変換技術を使っています。
さらに、WASIの上にVFSを実装しました。これにより、Rubyアプリを単一の.wasmファイルに容易にパッケージ化できます。Rubyアプリの配布が少しかんたんになります。
参考文献
Regexp timeout
正規表現マッチングにタイムアウトを指定できるようになりました。
Regexp.timeout = 1.0
/^a*b?a*$/ =~ "a" * 50000 + "x" #=> 1秒後にRegexp::TimeoutError
正規表現マッチングは予想外に時間がかかることがあることが知られています。もし信頼できない入力に対して非効率な可能性のある正規表現をマッチしていると、Denial of Service攻撃を効率的にできてしまう可能性があります(正規表現DoS、ReDoSなどと言われます)。
あなたのRubyアプリケーションの要件に基づいて適切にRegexp.timeoutを設定することで、DoSのリスクを防止、または大幅に緩和できます。ぜひあなたのアプリケーションで試してみてください。フィードバックを歓迎します。
なお、Regexp.timeoutはグローバルな設定です。もし一部の特別な正規表現にだけ異なるタイムアウトを設定したい場合は、Regexp.newのtimeoutキーワードを指定してください。
Regexp.timeout = 1.0
long_time_re = Regexp.new("^a*b?a*$", timeout: nil) # タイムアウトなし
long_time_re =~ "a" * 50000 + "x" # 割り込まれない
機能提案のチケット:https://bugs.ruby-lang.org/issues/17837
その他の主要な新機能
言語機能
- Find patternが実験的機能ではなくなりました。
非互換な変更
-
libyamlやlibffiのような 3rd パーティのライブラリのソースコードの同梱を廃止しました-
Psych に同梱していた
libyamlのソースコードは削除されました。ユーザーは自身で Ubuntu や Debian プラットフォームならlibyaml-devパッケージをインストールする必要があります。このパッケージ名称はプラットフォームごとに異なります。 -
Fiddle に同梱していた
libffiのソースコードは preview2 で削除する予定です。
-
パフォーマンスの改善
その他の注目すべき 3.1 からの変更点
標準添付ライブラリのアップデート
-
以下の default gems のバージョンがアップデートされました。
- TBD
-
以下の bundled gems のバージョンがアップデートされました。
- TBD
-
以下のライブラリが新たに bundled gems になりました。Bundler から利用する場合は Gemfile に明示的に指定してください。
- TBD
その他詳細については、NEWS ファイルまたはコミットログを参照してください。
なお、こうした変更により、Ruby 3.1.0 以降では 1058 個のファイルに変更が加えられ、34946 行の追加と 29962 行の削除が行われました !
ダウンロード
-
https://cache.ruby-lang.org/pub/ruby/3.2/ruby-3.2.0-preview1.tar.gz
SIZE: 20728782 SHA1: 7c4197e67f230b0c5d011f4efb9b9158743a61c8 SHA256: 6946b966c561d5dfc2a662b88e8211be30bfffc7bb2f37ce3cc62d6c46a0b818 SHA512: d24e77161996c2085f613a86d1ed5ef5c5bf0e18eb459f6a93a0014a5d2ce41079283b4283d24cb96448a0986c8c6c52a04584abd4e73911ea59cefeb786836e -
https://cache.ruby-lang.org/pub/ruby/3.2/ruby-3.2.0-preview1.tar.xz
SIZE: 15011400 SHA1: 6bcc30ac670ab391997e0d68ba97b451db078934 SHA256: 6d28477f7fa626b63bf139afd37bcfeb28fce6847b203fa10f37cb3615d0c35d SHA512: 0eca2c346b995d265df2659b4215ff96e515c29926c2a6256caad99db9c4c51fec1a2d899ca63a00010d4111060dc0fdd4f591be84c0a2c43b6303879de3c5de -
https://cache.ruby-lang.org/pub/ruby/3.2/ruby-3.2.0-preview1.zip
SIZE: 25370458 SHA1: 3c93c2e775366eec6e93cf670fc8677934cb4e48 SHA256: 24f8ae73d56366453defb0654de624bd1c063921a1d7ac780e4da56bb8fbf7e4 SHA512: 9754f11aa167df167d1b336e5c660aab1bd9e12421c093e0fe96e9a2da4ffb9859b7ea5263473bbc7b57ac8b5568cf7ac3116c0abdc647e1ff97a8d060ff7eae
Ruby とは
Rubyはまつもとゆきひろ (Matz) によって1993年に開発が始められ、今もオープンソースソフトウェアとして開発が続けられています。Rubyは様々なプラットフォームで動き、世界中で、特にWebアプリケーション開発のために使われています。
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